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「狭くたっておうち天国」の原風景

 ひんやりした空気、小雨の中のあささん。ウィルと毎朝通る道だけれど、お天気だと見向きもしないのに、雨が降るとなぜかウィルが曲がりたがる行き止まりの路地がある(車も入らず人もまずいないのでゆっくり&雨だから近場でさっさとうんちょスポットにいいのか?その割にはそこでする確率は低いんだけれど)。行き止まりの先にはスウェーデン・ハウスのおうち。おうちの横には芝生&古木敷きのガレージがあって、奥には小さな庭もありそう。いつものぞいてみたい衝動に駆られる。行き止まりだからとても静かで、なんだかぽっかりと周囲からそこだけ浮いたような、独特なムードの場所。今朝は雨降りで暗かったので、おうちの中の灯りがもれて、あたたかいムードだった。こういうおうち、いいなあ・・・。

 と、このおうちを後にして歩きながら道々思い出したのは、私のおばちゃん(父の妹)のうちのことだった。おばちゃんは、昔々はうちで一緒に暮らしてた。その頃の我が家は、おじいちゃん、おばあちゃん、父、母、おばちゃん、私、妹の7人家族。おばちゃんの部屋は北側の日の当たらない小さな三畳の間だった。おばちゃんは若い頃から、世界各国、あっちこっちを旅していた(長男で、自由を許されなかった父は、若い頃、好きに旅をしているおばちゃんを横目に、きっと葛藤があったに違いない)。おばちゃんの小さな三畳間には、そんな旅先で集めた世界&日本の民芸品がところ狭しと飾ってあって、とても賑やかだった。おばちゃんの部屋は私にはワンダーランドだった。
 私が小学生の頃、おばちゃんは独立して、うちから徒歩20分ほどのところに、家を借りた。通りから舗装されていない小さな路地を入った奥、これまた日の当たらない小さな平屋だった。なんとまだ、ボットン便所だった。小学生だった私は、たまにおばちゃんのうちに遊びに行った。昼間でも電気をつけないと薄暗いし、ぼっとんトイレはなんとなく怖かったけれど、そこはまぎれもなく「おばちゃんのうち」だった。飾りガラスの引き戸の玄関をガラガラと開ければ、相変わらずたくさんのカラフルな民芸品(中でも、私の記憶が正しければ、ルーマニアで買ったという頭にターバン巻いた太った陽気なおばさんの人形が、私の一番のお気に入りだった)や、おばちゃんが一時はまっていた手作りのクロスステッチ刺繍に彩られ、おばちゃんのセンスで、古くて暗い小さな家は、とても魅力的な家になっていた。おばちゃんはお料理はあまり得意とは言えなかったけれど、それでも私が遊びに行くと、小さな台所で、一品、おいしいものを作ってくれた。野菜たっぷりのビーフン炒めの味は忘れられない。
 その後、おばちゃんは引越しをした。たまたま私が入った大学の1年次のキャンパスのあった私鉄沿線の駅からいくつか先の鈍行しかとまらない駅、小高い丘の上のアパートだった。大学に入って間もなく、おばちゃんのうちに泊まりに行った。今度のうちは今までとは違って、とても開放的で、見晴らしがよく、日当たりのいい明るい部屋だった。相変わらず、おばちゃんのうちは素敵だった。以前からそうだったけれど、ここでもテレビは置かず、いつも大きなステレオのラジオを聴いていた。玄関には男物の靴があった。「男っ気がないと思われると、あぶないのよ」と教えてくれた。本当に男っ気がなかったのかどうかは、知らない(笑)。
 長い独身生活を謳歌していたおばちゃんだったけれど、その後、おばちゃんに輪をかけた趣味人で、料理の上手なダンナさんと出会い、今も趣味に囲まれ、ますます楽しそうな人生を送っています。

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コメント

宮下 奈都: 「太陽のパスタ、豆のスープ」のおばちゃんと主人公の関係みたい。イロイロ、違うけど(笑)
なつかしい記憶の奥の風景だね。おばちゃん、しあわせな結婚してよかったねー。

わたしの家に対する原風景、いちばん好きだったのはやっぱり母方実家かも。でも、今住んでいるスタイルとは全く違うし、そのお手本になっているのは、ヨーロッパのインテリア雑誌の気がする。。

それにしてもウィルくん、なんで雨の日にその路地に???

投稿: kero | 2011年8月22日 (月) 15時08分

keroさん
「太陽のパスタ、豆のスープ」、読んだのね!!
私、今まで読んだ宮下作品の中で、一番好きです!!
冬の旅行中に読んだんだけれど、そうじゃなくても大事な、とても思い出深い本です。
主人公が立ち直る過程は、期せずしてまるで自分と重なり、そうなのよ、そうなのよ、私も同じ・・・!という思いでいっぱいでした。
私が宮下作品に出会うきっかけは、keroさんが「田舎の紳士服店のモデルの妻」を貸してくれたことがきっかけでした。
それまで、知らない作家さんだったから、感謝です!
keroさんのお母さんのご実家は田舎の正統な日本のおうちでしたね。
色々な出会いや経験や思いが、今の自分たちを形作っているのだと思います。
そういう経験をさせてもらったことは、やっぱりとても幸せだったのだと思います。
おばちゃんの影響もあったでしょう、私もティーンの頃から、部屋作りには、多少凝ったのですよ。
部屋も自分でペンキで塗ったし、押入れも改造した(笑)。
好きだった本は「美しい部屋」でした。
恥ずかしい青春時代の中でも、数少ない自分を肯定できる思い出(笑)。
そしてもちろん、雲の上の人だったkeroさんのおうちも、憧れでいっぱいですよ!!
お部屋作りに限らず、マメなお掃除のこと(まだ途上ですが、以前に比べれば格段に進歩していると自負しています、って以前がどんだけ苦手だったか・笑)、素敵だなあと思うところはたくさんあって、おそらく無意識のうちにぽんすけ流に変換して取り入れさせてもらってます(笑)。
ウィルは、雨の日はコースどりに異議を唱えることが多いのです。
いつもは曲がらない角を曲がりたがります(だいたい決まってる)。
私と一緒で、ウィルも雨は早く退散したいのかもしれませんね。

投稿: ぽんすけ | 2011年8月22日 (月) 15時52分

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